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パワー系とクレバー系、笑いの取り方はこう違う

居酒屋の座敷、注文した唐揚げがなかなか来ない。沈黙が流れかけたその瞬間、片方は立ち上がって「もう僕が揚げてきます」と厨房に向かうフリをし、もう片方は座ったまま小さい声で「これ、鶏が一から育ってる説あるな」とつぶやく。どちらもちゃんと笑いが起きる。でも、起こし方がまるで違うんですよね。

お笑いタイプ診断には「パワー(P)/クレバー(C)」という軸があります。勢いやテンション、体で押していくのがパワー系。言葉選びや間、文脈で静かに刺してくるのがクレバー系。同じ場にいても、笑いに変える経路が違うタイプです。

今日はこの2つを、できるだけ日常の場面に引き寄せて比べてみます。優劣の話ではなく、効き方の違いの話。並べてみると、自分がどっち寄りなのかが見えてきたりします。

滑った瞬間に、何が起きるか

一番わかりやすいのは「滑ったとき」です。渾身のひと言を放って、場がシーンとなる。あの数秒の処理に、性格がそのまま出ます。

パワー系は、滑りを勢いで上書きしようとします。スベった自覚はある。あるんだけど、ここで止まったら負けだという感覚で、声を一段大きくして次へ突っ込んでいく。ときには「今の聞かなかったことにして!」と滑った事実そのものをネタにして笑いに変えてしまう。フルスロットル暴れん坊(BAPV)あたりは、もう滑りを燃料にして走り出すタイプですね。

クレバー系のリカバリーは静かです。沈黙を恐れない。むしろ「あれ、今の伝わらなかったか」という間そのものを使って、半笑いの顔をして「……まあ、わかる人だけわかればいいか」と一段メタな位置に逃げる。トリッキー曲者(BACV)やカウンター切り返し師(TRCV)は、滑りを正面から処理せず、角度をずらして回収するのが上手だったりします。

同じ失敗でも、片方は加速で、片方は方向転換で抜ける。並べてみると面白いものです。

パワー系が無敵になる場所、空回りする場所

パワー系の最大の強みは、理屈抜きに場の温度を上げられることです。理由なんていらない。テンションが高い人が一人いるだけで、その場の空気は確実に動きます。大人数の飲み会、初対面が多い集まり、ノリで盛り上がりたい夜。こういう場で、ハイテンション愛され王(BRPV)みたいな人がいると、全体がスッと温まる。

理屈じゃなく体感で笑わせるので、説明がいらないのも強い。誰にでも、その場で、即座に効く。

ただ、同じ熱量が裏目に出る場面もあります。静かなカフェで二人きり、相手が疲れている夜、しんみりした空気。ここで急にギアを上げると、温度差がそのまま気まずさになってしまう。場が温まっていない状態で全力を出すと、熱が空気に吸われて空回りする——心当たりのある人、いませんか。パワーは燃料が要るんですよね。冷えた場でゼロから着火するのは、実はけっこう難しい。

クレバー系がじわじわ効く理由

クレバー系は逆で、落ち着いた場や少人数でこそ本領を発揮します。相手の話をちゃんと聞いていて、文脈を踏まえた一発を、ここぞというタイミングで置く。声を張らなくていい。むしろ静かなほうが、言葉の精度が際立ちます。

マイペース仙人(BRCS)やミステリアス賢者(TRCS)のように、表情を変えずにポツリと言ったひと言が、数秒遅れてジワっと効いてくる。あの「あ、今のうまいな」と後から気づく感じ、好きな人は多いと思います。

弱点もはっきりしています。伝わる人には深く刺さるけれど、伝わらない人にはまったく届かない。文脈や前提の共有が必要なぶん、初対面だらけの場やテンポの速いノリの中では、せっかくのひと言が流されてしまう。スナイパー毒舌家(TACS)の切れ味も、聞き手にその毒を受け止める準備がないと、ただスルーされて終わったりします。狙撃は当たれば一撃だけど、外すと音もなく消える。

結局は、場との相性

ここまで読んで気づいた人もいると思いますが、パワーとクレバーは強さの優劣じゃなくて、効く場所が違うだけなんですよね。

大人数のノリにはパワーが、少人数の深い会話にはクレバーが向く。逆の場所に置かれると、どちらも実力を出しきれない。冷えた場で無理に着火しようとして疲れた経験がある人も、届かない相手に投げ続けて空振りした夜を覚えている人も、たぶん場とのミスマッチに巻き込まれていただけです。タイプを知るというのは、自分がどの土俵で強いかをひとつ手に入れることでもあります。

ちなみに僕はオールラウンド司令塔(TACV)で、どちらかというとクレバー寄り。賑やかな場では一歩引いて、全体を見ながら隙間に言葉を差し込むタイプです。自分がどっち寄りなのか気になったら、診断で確かめてみてください。次に誰かが滑った瞬間、自分が加速で抜けるのか方向転換で抜けるのか、ちょっと観察してみるのも面白いですよ。