ボケとツッコミは才能ではなく役割
四人で居酒屋に集まって、誰かが頼んだメニューが想像と全然違う見た目で運ばれてきた瞬間。「いや何これ」と最初に声を出す人がいて、その横で「やばい、絶対これ写真と別物」と乗っかる人がいて、さらにその奥で黙ってスマホを構えて撮影を始める人がいます。
この三人、別に役割を決めて集まったわけじゃないですよね。なんとなく、その場の流れで自分の立ち位置が決まっていく。これが面白いところで、僕はずっと「ボケる人」「ツッコむ人」って生まれ持った性格みたいなものだと思っていたんですが、最近どうもそうじゃないなと感じています。
ボケとツッコミは、才能というより役割なんじゃないか。今日はそんな話をします。
同じ自分が、相手によって入れ替わる
思い当たる人、いると思います。いつも一緒にいるとびきり面白い友達。あいつの前だと、自分はだいたいツッコミに回っているはずです。「いやそれおかしいって」「待って、話が飛んでる」。あいつがどんどんボケてくるから、自分は受け止める側になる。
ところが、別のグループに行くと景色が変わります。職場の落ち着いた先輩と二人でランチしているとき、ボケ担当だった人がいなくなった途端、なぜか自分が「この前こんな失敗したんですよ」と笑いを取りにいっていたりする。さっきまでツッコミだったのに。
つまり役割は、自分のなかに固定されているわけじゃなくて、その場の人間関係のなかで割り振られているんですよね。誰かが強烈に発信していれば、自分は自然と受信側に回る。発信する人がいなければ、空席を埋めるように自分が前に出る。役割は椅子取りゲームに似ています。
ボケは発信、ツッコミは受信
この入れ替わりが見えてくると、ボケとツッコミという言葉も少し整理しやすくなります。
僕の診断サービスでは、笑いを生み出す発信側をボケ(B)、反応して笑いを成立させる側をツッコミ(T)として軸のひとつに置いています。難しく考えなくて大丈夫で、要するにボケはボールを投げる人、ツッコミはそのボールを受けて打ち返す人です。
会話をキャッチボールだと思うと、いきなり全体が見えてきます。一方が変な球を投げて、もう一方がきっちり捕って投げ返す。この往復があってはじめて、その場に笑いが転がり始める。ボケだけが連続しても球は地面に落ちるだけだし、ツッコミだけがいても投げる球がありません。発信と受信、両方そろって初めて場が回り出す。
同じ発信側でも、出し方は人によってまるで違います。「フルスロットル暴れん坊」のようにとにかく数で押してくるタイプもいれば、口数は少ないのに一発が鋭い「サイレント策士」のようなタイプもいる。投げる球の質がこれだけ違うのが、見ていて面白いところだったりします。
ツッコミは脇役じゃない
なんとなく世間のイメージだと、面白いことを言うボケが主役で、ツッコミはそのサポート、みたいな空気がありませんか。でも実際の会話を思い返してみてください。誰かが妙なことを言ったあと、シーンとしたまま誰も拾わなかったら、それはただの変な発言で終わります。笑いとして完成しない。
ツッコミは、宙に浮いた発言を「これは面白い話なんですよ」と全員に翻訳して届ける仕事なんですよね。誰の目にも見える角度まで持ってきて、はじめてその発言は笑いになる。むしろ場を最後に成立させているのは受信側です。
そして受信側にも、はっきりした個性があります。相手の一言を一瞬で跳ね返すのが快感の「カウンター切り返し師」がいる。場全体を見渡しながら、誰の発言をどう拾うかを冷静に組み立てる人もいる。とても脇役なんて呼べたものじゃありません。
沈黙が起きたとき、何をするか
じゃあ自分はどちら側に自然と回るのか。これ、けっこう簡単に分かる観察方法があります。
会話がふっと途切れて、気まずい沈黙が落ちた瞬間。そのとき自分が何をしているかを思い出してみてください。
とっさに「そういえばさ」と新しい話題を放り込んだり、自分の失敗談で空気を変えようとしたりする人は、発信側の気質が強い。沈黙という空席を、自分から動いて埋めにいくタイプです。一方で、沈黙そのものは平気で、誰かが何か言い出すのを待っている。でも誰かが口を開いた瞬間にすかさず反応する。そういう人は受信側に居心地のよさを感じているはずです。
ちなみに僕は診断するとTACV、オールラウンド司令塔という結果でした。沈黙が起きるとつい全体を見渡して「この場はどう転がすか」を考えてしまう。完全な発信でも受信でもなく、場を回す側に寄りがちなんだと思います。
ボケかツッコミか、白黒つける必要はありません。相手が変われば役割も変わる、その流動性があるからこそ会話は飽きずに面白い。それでも、放っておくと自分が引き寄せられる側というのは、うっすら決まっていたりします。その傾向が気になったら、診断で覗いてみてください。意外と知らない自分の球の投げ方が見えてくるかもしれません。