56問の質問をどう作ったか
最初に作った質問のひとつは、こんなやつでした。「あなたはお笑いのセンスがある方だと思う」。我ながら、ひどい質問です。
これに「そう思う」と答えた人が本当に面白いとは限らないし、逆に謙遜して「思わない」を選ぶ人もいる。自己評価って、その人の性格は映すけど、実際にどう振る舞うかはほとんど映してくれないんですよね。だから、この質問は早々に没にしました。
お笑いタイプ診断の56問は、こういう没を何十個も積み重ねた末に残ったものです。今日は、その作り方の裏側を少し書いてみます。地味な話ですが、診断を受けてくれた人が「この質問、自分のこと見られてるみたいで怖い」と言ってくれたとき、ここまでやってよかったと思えたので。
1軸を何問で測るか
この診断は、ボケ/ツッコミ、いじり/いじられ、パワー/クレバー、手数/厳選という4つの軸で人を測ります。その組み合わせで16タイプに分かれる仕組みです。
そうなると、当然ひとつの軸を1問で決めるわけにはいきません。「あなたはボケですか」の一問で全部が決まったら、それはもう診断じゃなくてアンケートです。同じ軸を、違う角度から何度も聞く。聞き方を変えて、同じ傾向が出るかを確かめる。そうやって精度を上げていきます。
問題は、1軸あたり何問あれば「ブレない」と言えるかでした。少なすぎると一回の気分で結果が裏返る。たとえば3問だと、たまたま2問で気分屋の答えをすると、もうそっち側に倒れてしまう。かといって多すぎると、同じ軸を手を変え品を変え聞かれた読者が「さっきと同じこと聞いてない?」と飽きて、後半を適当に流し始める。
僕の場合、ひとつの軸の傾きを安心して言い切れるのが、自分で何度も試した感触で1軸14問でした。1問の気分で結果が動かず、なおかつ「しつこい」と感じられる手前。この14問が4軸そろって、合計56問になります。一回の集中で最後まで走り切れて、しかもきれいに4で割れる。設計していて、わりと気持ちよかったです。
「面白いか」ではなく「どう動くか」を聞く
質問文で一番こだわったのは、自己認識を直接聞かないことでした。
たとえばボケかツッコミかを判定したいとき、「あなたはボケるのが得意ですか」とは聞きません。代わりに、シーンを思い浮かべてもらいます。飲み会で誰かが盛大に噛んだ瞬間、自分から変なことを言って場をかき回したくなるか。それとも、すかさず一言入れて拾いたくなるか。
行動を聞くと、答えるときに具体的な顔やシーンが浮かぶんです。「この前のあれだ」って。そうやって思い出しながら答えてもらえると、建前じゃなくて素のクセが出てくる。逆に抽象的な質問だと、人はつい「こうありたい自分」で答えてしまう。そういう質問は片っ端から書き直しました。
没にしたものをもうひとつ挙げると、「ノリツッコミができる」。これも没です。できる/できないというスキルを聞いても、その人が普段ボケ側に立つのかツッコミ側に立つのかは分からない。技術じゃなくて、その場でとっさに体が動く方向を知りたかったんです。
2択ではなく7段階にした理由
最初は「はい/いいえ」の2択でいこうと思っていました。シンプルだし、判定も楽だから。
でもテストしてみて、すぐに無理だと気づきました。世の中の大半の人は、はっきり「いじる側」でも「いじられる側」でもないんですよね。場面によるし、相手による。2択を迫ると、「どっちかというといじられる方かな…でも後輩には…」と悩んだ末に、半ば投げやりに片方を選ぶことになる。その一票が、結果をまるごと変えてしまう。
だから7段階のスペクトラムにしました。「そう思う」から「そう思わない」まで、強さを込めて答えられる。「まあ、どちらかといえば」くらいの微妙な傾きを、ちゃんと数字として拾えるようにしたかった。中間の人を切り捨てない。これは譲れない部分でした。
友達にテストしてもらってから直した
頭の中だけで作った質問って、自分には完璧に見えるんです。でも、他人に渡した瞬間に崩れる。
完成したつもりの56問を、まず友達数人にやってもらいました。そうしたら「この質問、何を聞かれてるのか分からない」という反応が、思っていた何倍も返ってきた。僕の中では行動シーンのつもりだった文章が、相手にはふわっとした抽象論に読めていたんです。
一番覚えているのは、勢いで押すパワー型か、言葉選びで攻めるクレバー型かを測る質問でした。僕の元の文だと、ほぼ全員が同じ側に寄ってしまって、軸として機能していなかった。聞き方を、具体的なシーン——たとえば友達とのドライブで沈黙が訪れたとき、テンションで突破するか、一言だけ仕込んで笑わせるか——に変えたら、ようやくきれいに割れました。
ちなみに僕自身の結果はTACV、オールラウンド司令塔でした。自分で作った診断に自分が振り回されるのも、なかなか乙なものです。